【読書】ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~
結論から書くと、素晴らしい作品の一言。人の死ぬミステリーばかり読んでいたので、人の死なないミステリーも良い物だなと。
各話が作品のタイトルになっており、その作品に沿ったストーリー構成となっていて楽しめる。作品自体を知らなくても、各話のストーリーがちゃんと合ってることや、ちょっとした概要を栞子さんが大輔に説明するので、それで何となく知ることができる。大輔が本を読めない体質だからこそ、栞子さんにどんな話なのか説明してもらい、それを読者に伝えるのは上手いなと。
さて、ここからはなるべくネタバレしないように感想を書いていくつもりだが、どうしても内容の話が出てしまうので、まだ読んでない人は注意してこの先は進んで欲しい。
プロローグでは栞子さんとの出会いについて。大輔がまだ高2の頃の話。出会いと言っても、一目見て綺麗な人だなと思う程度で、そこから発展するどうこうは無く、伏線的なもの。ここで大輔が自分がもっと積極的であれば、栞子さんとお近づきになれたのだろうかみたいな話をするが、これにはうんうんと頷いてしまった。人生は行動1つでガラッと展開は変わるものだし(それが奏功するかは蓋を開けてみるまで分からないものだが……)、最近はその中でも積極性ってのは非常に重要だと思っていたので。
さて、1話ではいきなり大輔の出生に関して割と重要な話に。物語はまだ始まったばかりなのに、いきなりぶっちゃっけてしまっていいのだろうか。この出生の話は4話とリンクする。
個人的には3話の論理学入門、もとい坂口夫妻が非常に好きだった。段々と目が見えなくなりつつある坂口さんと、坂口さんのことが好きでたまらない奥さん。ラストでは夫婦愛について論理的に展開していくシーンが良かった。
また、4話でもチラッとこの坂口夫妻が登場するのだが、奥さんが坂口さんの腕をしっかりと組んでベタベタしている。視力を失いつつある坂口さんをリードしてくれる、自分が坂口さんの目となる奥さんの優しさだ。ベタベタな奥さんがしっかりと映えるシーンだし、本当に綺麗な愛の物語りだなと。
そして物語は最終章へと。何故、栞子さんが足を怪我して入院していたのかが打ち明けられる。
とあるコレクターが栞子さんの所持している古書を何としても手に入れようとし、その方法がどんどん過激になる。見事に古書に纏わる事件で、タイトルに相応しいミステリーというわけだ。コレクターによる何としても手に入れたい精神とこれが事件に発展してしまうのは、現実にも十分起こりうる話だと思う。
この犯人であるコレクターもいきなり出てきたわけではなく、以前の話でチラチラ登場しているのが憎い。そしてこの犯人、大輔と意外な関係であることが判明する。これは1話とリンクするので、1話にパラパラと戻りたくなる。上手い。
物語の終わり方、最後の数行も素晴らしかった。これ以上に栞子さんらしい終わり方は無いのではないだろうか?
事あるごとに素晴らしいを連呼してて、ちょっとアレな感想になってしまったけど、とにかく素晴らしかったので仕方あるまい。
本好きのためのミステリーなので、本好きな人たちはぜひ。って、もうとっくの昔に読んでるか。